ITサービス業のJBCC株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:東上 征司)は、独自のAI駆動開発を推進する体制を改編し、「AI戦略統括」と「AI推進部」を新たに設けました。同社は今夏から、システム開発(SI)を自律的に担う「SIエージェント」の開発を進めています。今回の改編は、その開発が進展したことを受けて、実運用に向けた体制を強化するものです。
SIエージェントとは、開発の各工程を自律的にこなす個々のAIエージェントの集まり(エージェント群)を指します。新体制では、SIエージェントを大規模プロジェクトへ投入・展開することを目指します。これにより、より高品質なシステムを提供し、顧客企業の経営変革を支援する方針です。
上流工程で熟練開発者と同レベルの項目・粒度の成果物を生成
JBCCグループは、基幹システムの開発期間の短縮と品質の高さを両立する独自の開発手法「JBアジャイル」を持っています。この手法をAIでさらに進化させ、より多くの顧客の変革を支援することを目指しています。その一環として、AIスタートアップ企業のスパイスコード株式会社と業務提携し、システム開発を上流から推進するSIエージェントを共同で開発しています。
現段階では、現状分析・構想策定・要件定義からなる上流工程において、実際のプロジェクトで作成する一連の成果物を、熟練開発者と同レベルの項目と粒度で生成することに成功しています。今後は、エンジニアが経験の中で培ってきたノウハウや、実際のプロジェクトで得られる業界・業務の知識をSIエージェントに取り込みます。あわせて実案件でも活用しながら、精度を高めていく計画です。
3つの推進部が連動する新体制
SI事業部ではこれまでも、2025年に技術戦略本部を立ち上げるなど、JBアジャイルをAI駆動に進化させるための組織強化を進めてきました。今回はSIエージェントの開発進展を踏まえ、同本部内に「AI戦略統括」と「AI推進部」を新設しました。既存の「技術推進部」とあわせて、統括の傘下に置いています。各組織の役割は次のとおりです。
- AI戦略統括:大規模な基幹システム開発のプロジェクトマネジャー(PM)を歴任した本部長級の人材を配置
- AI推進部:顧客のシステム開発を最前線で担ってきたJBアジャイルのエキスパート陣が、新しい開発プロセスを整備
- 技術推進部:並行してSIエージェントの技術検証を推進
- 共創推進部:顧客理解・ビジネス理解を強みとし、AI推進部による開発プロセスの整備と技術推進部による技術検証の成果を、顧客への価値提案につなげる
3つの推進部が連動することで、独自のAI駆動開発の確立から顧客への提供までを一体で進めます。同時に、新しい開発手法をSI事業部全体に広げ、AI駆動開発の担い手を増やしていく考えです。また、組織全体として顧客の課題を起点に活動し、システムの構想・開発・運用を顧客と共に進める、いわゆる「FDE(Forward Deployed Engineer)」型の支援も推進します。
ブラックボックス化したシステムに「長期記憶」で挑む
IT人材の不足が深刻化する中、多くの企業では、開発担当者の退職や長年の増改築による複雑化で、自社システムの全体像を把握しにくいといった課題を抱えています。こうしてブラックボックス化したシステムは、改修や刷新に多くの時間と労力がかかります。そのためビジネス環境の変化に対応しにくく、企業の迅速な事業変革を妨げる要因になっています。
ブラックボックス化したシステムを刷新するには、まず既存システムや業務の実態を正しく把握する必要があります。しかしその作業は熟練開発者の経験に頼る部分が大きく、多くの時間を要します。さらに、得られた知見も個人にとどまりがちでした。共同開発中のSIエージェントは、スパイスコードのAI技術「長期記憶」を核としています。この技術により、既存のシステム資産や設計情報、業務に関する膨大な情報を短期間で解析・整理し、業務に重要なものを長期的に蓄積し続けることができます。
通常のAIは一度に膨大な情報を扱いきれません。そのため対話の一貫性が保てなかったり、ハルシネーション(虚偽回答)が起きやすくなったりします。長期記憶はこれらの課題を解消するもので、基幹システム開発での全面的な活用が期待できるとされています。SIエージェントを使った開発により、既存システムや業務の実態を早い段階で正確に把握し、開発のスピードと品質を高めながら、事業に必要なシステムを構築できるようになります。さらに蓄積した知見を将来へ引き継ぐことで、経営や事業の変化に応じてシステムを柔軟に進化させ続けられる開発を目指します。
パイロット展開から月額課金型の伴走サービスへ
新体制のもとでは、実案件での活用などを通じてSIエージェントの品質検証と機能拡張をさらに進め、大規模案件でのパイロット展開の早期実施につなげます。同時に、SI事業全体の対応力を高め、プロジェクトの幅と供給能力の向上を図ります。将来的には、SIエージェントを顧客自身も使える形に磨き上げる計画です。そのうえで、顧客が主体的にシステム開発を進め、JBCCのエンジニアが伴走支援する月額課金型のストックサービスへの発展を目指します。これは、JBCCグループが掲げるAIサービスモデルを、システム開発の領域で具体化する取り組みと位置づけられています。